<U11>

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「バカ臭いと思うだろう? だが実際には人間なんて 感情の生き物だ。 我慢なんて、 たかが知れている。 何もかも 嫌になっていた俺に、 お前の言葉は暗闇に ぽっかり浮かんだ 灯りのような、 そんな気がしたよ。 それを見て、 つい足が止まった。 俺は馬鹿をせずに 済んだのさ」 「灯り」 それが和代の心にも 燈った気がして 和代は胸が 熱くなる気がした。 それは どんな慰めよりも 心が和らいだ一瞬だった。 胸の傷も過去も、 致し方ないで 済ましてくれた 川島の乱暴な、 さりげなさに、 かえって 救われた気がした。
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