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セピア色の写真は まだ幼い頃の ものなのか、 少女の面影が 残っていた。 30年近く前に逝った 娘の大事な写真を、 会った事もない 母方祖父母は孫に 渡してくれるように 頼んだと言う。 初めて見る 自分の母の顔に、 食い入るように 見つめながら 和代は消え入るような 声音で言った。 「陽さん」 「ん?」 「陽さんのメール、 消さなくてよかった」 飲みかけていた おしるこを吹き出しかけて、 川島は咳込んだ。
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