<U12>

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あれほど恐れられた 前田のその顔は 何処にでもいる 中年女性のものになり、 皆を驚かせていた。 他を圧することに 懸命だった前田もまた、 この会社と言う 社会の内の 部品の1つだった。 そしてその部品は、 用がなければ簡単に 取り外されると言う 世界だったのだ。 だからこそ前田は 自分が会社にとって 価値のある 部品である事を証明して 見せたかったのだろう。 これまでの前田との確執は、 大きくて角張った 上流の石のような、 世間慣れしていない和代が 前田の行く手を塞ぐように 見えていたのではないかと、 自分自身を振り返って そう思うように なっていた。
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