<U12>

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それでも和代は 涙を見せなかった。 もちろんそれは 人前だからかもしれない。 人並み以上に我慢強い 和代の心中を察して 洋子の方が 泣きたい気持ちだった。 和代は長いまつげを 伏せ気味にして、 微笑んで見せた。 「帰って来るって 言ったから待ってる。 子供たちも、 もう手が掛かる訳じゃ ないから大丈夫」 四十歳に入ってからの 再就職はこれまでの生活を 一変させると皆判っていて、 生活を独りで 支えるのならば このまま残った方が いいのではと言う洋子に、 和代は大丈夫を 繰り返すだけだった。 そこに小松が走って来た。 多くの仲間と離れる事に なったせいかその目には 涙がにじんでいた。
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