<U12>

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占いの学校で 付けてもらった 雅号を使わずに 朱里と言う名を 用いたのは、 和代にとっては 陽一朗こそが 灯りだったからに 他ならない。 懐かしい かつての事を思い出して 和代は頷いた。 「ほんとに、 その時辛くても 後になると あの時が良かったって 思うようになるんだね」 そう言った夫を思い、 じっとしていると 目の前がにじんで来た。 慌てて立ち上がって 後ろの棚に置かれた 後ろ脚で立ちあがり 長ネギを杖代わりにした像に 手を合わせた。 この置物は フリーマーケットで 購入したもので、 きりっとした面差しに 鋭い眼差しは 何処か夫に似ていた。 これを朱里は 亀ネギ仙人と呼んでいた。
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