<U12>

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「いつかきっと、 帰ってきますよね」 そう信じていても 堪えきれない時には 外に脱走するしか なかった。 周りを見ながら 歩いていると 涙も乾いて 気持ちもまぎれて来る。 「でも、 いつも脱走していると おかしなヤツって 思われちゃうよね。 でも、うんん。 ま、いっか」 カーテンの中で うろうろしていた和代は 思い切って外に出た。 喉元を覆うスカーフを 胸の方に押し込んでいると、 ちょうどそこにヨシキが 帰ってくる姿が見えた。 「あ、帰って来た。 ん?お客さん連れかな」 ヨシキの後ろに、 杖をついて やって来る男性は ほんの少し右脚を 引きずっていた。 「あ、朱里さん! お客様ですよ!」
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