第1章

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“なんで毎回、 不良を出せるかな “ そう心に呟くと 再び、ため息をついた。 当たり前な事なのだが、 こんなことを口に出して 言えないので 和代の心の声はいつも最悪、 眉間には縦皺が 年を追うごとに 深く刻まれていく気がする。 それでも口にしないだけ、 いいのかもしれない。 女が多いこの職場では、 うかつなひと言が命取りにも なりかねない。 “自分で全検してようぅ、 何回やれば気が済むんだぁぁ!“ 出したくて不良を 出すわけではないことは わかっているが、 せめて心の中では 吠えさせてくれ、と そういつものように 心に叫びつつ、 通路に出て行くと、 にこやかに微笑むリーダーの 千田 洋子が待っていた。
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