太陽の砂糖漬け

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しばらくの間、教室の後ろには死んだように眠っている僕がいた。 実のところ、とても深い眠りだったのは確かだ。 疲れていたのだろうか? どうしてそんなに疲れていたのかはもう思い出せない。 思春期のど真ん中、自分も他人も持て余していた。 もしかしたら、と思う。 あの日、マルメロの匂いのする保健室で、僕の一部はほんとうに死んでしまったのかもしれない。 目が覚めたとき、少し身軽になっていたから。 それは痛みをともなわず、恐ろしいことでもない。 高く澄んだ空に、半透明な自分が吸い込まれていっただけだ。 祝福された気持ちの良い昼下がりに、密やかに。 お し ま い
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