第1章   星は神様 そして裏切り

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   1 肌寒さの残る5月の夜、家族3人であるところに向かっていた。 窓から見える車や人、いろんな建物が星桜(せな)の後ろに流れていく。 車で出掛けるのはすごく楽しい。遠くにも行けるし、お菓子も奮発してくれる。そしてなにより、今日は私の7歳の誕生日だ。 「パパ、ママ、これからどこに行くの?」 「それは着いてからのお楽しみだよ。絶対に星桜の喜ぶ場所だ」 「ふふふっ、楽しみね」 そう言い車を走らせている。 今日の天気は晴れ。雲1つない、いい天気だ。 パパは運転中ずっとニコニコしていた。 愛しい娘を喜ばせたい。そんな感情は星桜には伝わらないが、ママはつられて笑顔になっていた。 ママはいつものよりも大きめのバッグを持ってきていた。中には星桜の大好きな駄菓子も入っている。 星桜が一番好きな駄菓子はさくらんぼ餅 。正方形の小さいお餅がたくさん入っていて、楊枝でさして食べる。ママと分け合って食べるのが星桜のいつもの食べ方だった。 星桜にとって夜のお出掛けは特別なもの。すごくワクワクする。 普段はあまり見られない夜の世界。昼間と違って何もかもが新鮮に見えてしまう。 後部座席では親子の他愛のない会話。運転手はいつもひとりぼっち。でもそれはもうすぐ終わりだ。
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