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「おばあちゃん。ぬいぐるみのお腹の横の糸、切ってもいいですか? 」
返事は即答だった。
パパが宝物を傷つけてでも、星桜に渡したかったもの。それがどういうことか、おばあちゃんはよく分かっている。
親から子へ、それは愛情と同じくらい大切なものだった。
星桜はパパの机の上に置いてあるペン立てからハサミを取り出し、荒く縫い付けられている糸を切る。
そしてふわふわの綿をかき分けながら探すと、確かにそれはあった。
あの日、手紙と一緒に入っていた黄色い宝石。全くと言っていいほど同じものだった。
「あれ? まだ何かある……」
星桜はぬいぐるみの中から1枚の小さな紙を取り出した。
「何? それ」
「何か……書いてある」
【。2つで1つ】
紙にはそう、書かれていた。
「それってやっぱり、あれ……よね? 」
ママが言うあれとは、パパからの手紙に書かれていた意味不明な言葉のことだ。
【その日の終り、暗闇の中、示す先へ】
ママのサプライズでもない、夢のことでもない、解決していないのにまた新しい言葉が出てきた。
「でもあの手紙のことから考えると、少なくともこの言葉の前に他の言葉があるってことだよね」
これに関しては、子供の星桜の方が頭の回転が速かった。
言葉の頭に付いている不自然な句点(。)、言葉と言葉を区切るためのものだと星桜は考えた。
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