第?章 【daydream believer (上)】

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「よっしゃあ!詠唱終わったぜ!」 俺はアンフィスバエナの幼龍に向かってそう叫んだ。 幼龍とは言っても、頭と尾にあるそれぞれの頭部が噛み合って車輪のようになり、こちらへ向かって回転してくる胴体は、建物の2階は優に越える高さだ。 数は2体。すでに翼は破壊しているので、空を飛ぶことはできないが、高速で回転を続けるその巨大な胴体を、一体はゲンが手にした赤い太刀で、もう一体は氷の魔王アトレクスが、目の前に唱えた氷の楯で受け止めている。 町の地下に隠されていた洞窟に、俺達はやって来ていた。 薄暗い地面には、蛇が吐いた猛毒が、まさに毒々しい紫色に広がっている。 俺は、地上へと続く細長い排気パイプのひとつによじ登った。 このパイプは、曲がりくねりながら町の至る所へと繋がっていて、アンフィスバエナの毒の霧を、意図して町の人間に吸わせる仕組みになっていた。 ヒーローとは常に、誰よりも高いところにいるものだ。 俺はパイプによじ登ると、アンフィスバエナの目線の高さにあった足場にでんと立つ。 「おーし、これで最後だ蛇ちゃんっ、よくも今まで町の人達を苦しめてくれたなあっ!俺様の超絶最強呪文で、あーっという間に地獄へ送ってやるぜぇ!」 叫ぶ俺の背後には、まばゆい金色の輝きを放つ光の輪、通称“シャイン・ラック”が4個、俺の勇姿を讃えて煌めいている。 俺のカッコ良さを演出するために、寝ないで考えた光の魔法だ。 ちなみに、横向きにすれば棚がわりにもなる。まさに一石二鳥というわけだ。 俺は、最後のキメ台詞を叫ぶ準備に入った。 特に邪魔になっていた訳ではないが、額の真ん中で2つに分かれている前髪をかきあげる。 …………俺、カッコイイ。 「この世にはびこる魔物、魔王、帝王、悪霊。それからえー……っと、とにかく全部まとめてこの天才創呪師ヒューゴ・エーシュ様がけちょんけちょんに」 「おい早くしろ!」 「エーシュ、急いで!」 せっかく、前から考えていたキメ台詞を、ゲンとアトレクスが同時に止めた。
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