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黒き門の誰もいない家
俺が強いから奪ってやったのだ。
人にコキ使われるなんて真っ平ご免だ。真面目に働くヤツは俺の餌でしかない。俺は野生の狼だから、そんなヤツから目の眩むような大金を強奪してやった。
逃げる途中の車のラジオが、奪われた現金の紙幣ナンバーが分かっていると告げた。それは素晴らしい情報で、俺は思わず馬鹿なマスコミと警察にキスしてやりたくなった。
すぐに車を秋川方面の山に走らせた。その山に俺しか知らない秘密の場所があるのだ。そこに金を隠してほとぼりが冷めるまで、また愚鈍なヤツを嘲笑するとしようか。
俺は愉悦に浸りながら、金を埋める場所を探しに山に入った。
私が弱いから奪われたのです。
人の上に立つ器量がないのです。ですから、人に使われる仕事しか自分にはないのです。オドオドと臆病な犬のように、人の機嫌を伺うしか能がありません。
名前が野呂間健太なので、時代の変化についていけないノロマな犬だと嘲笑されます。我ながら、つくづく嫌になる人生です。
それだから狡猾な強盗に会社の金を奪われ、挙句に責任を取らされて仕事を首になりました。絶望的です。生きている価値がありません。もうこの世から消えて無くなりたい。
私は途方に暮れて、首を縊る場所を探しに山に入りました。
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