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と、男は唐突にくるりと体を反転させ、もと来た方を向いて健介に並ぶと、肩を叩いた。
「うわっ」
「行こうか、一緒に」
「えっ、行くって、どこに?」
「きみを呼んでるやつのところ。案内するよ。……大丈夫、盗られた鞄もそこにあると思うよ」
言うなり、男はすたすたと歩き始めて、その背中がすぐに細い道を曲がり消えかかる。……男の言葉は全く不可解で、健介には何を言っているのかわけがわからなかったが、あの手紙のことと、鞄の行き先について、何か知っているのは確からしい。……とにかくついていくしかない、と、健介は藁をも掴む思いで、慌てて後を追い歩き始めた。
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