第1章

5/5
前へ
/5ページ
次へ
と、男は唐突にくるりと体を反転させ、もと来た方を向いて健介に並ぶと、肩を叩いた。 「うわっ」 「行こうか、一緒に」 「えっ、行くって、どこに?」 「きみを呼んでるやつのところ。案内するよ。……大丈夫、盗られた鞄もそこにあると思うよ」 言うなり、男はすたすたと歩き始めて、その背中がすぐに細い道を曲がり消えかかる。……男の言葉は全く不可解で、健介には何を言っているのかわけがわからなかったが、あの手紙のことと、鞄の行き先について、何か知っているのは確からしい。……とにかくついていくしかない、と、健介は藁をも掴む思いで、慌てて後を追い歩き始めた。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加