第一章 迷い犬 迷い人

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  「いい天気だ。  引越し日和だな」  寮の建物の前に置かれた手入れのいいプラドは朝日によく光っていた。 「ところで、志免。  試験始まったんだろう。  いいのか?」 「いいのかって、連れてきておいて……。  いいんですよ。  今日は僕の取ってるやつないですから」  諦めたように言う台詞をたいして聞きもせずに、あっそう、と内藤は後ろを開けた。まだ強い新車の匂いがした。 「ちゃんと奇麗なダンボールに詰めてあるんだろうなあ」  不安げに言う内藤に、加奈はレジャーシートを示した。
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