第一章 迷い犬 迷い人

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「だいじょうぶよ。  これ持ってきたもん。  下に敷いたげる」  言いながら、もうそこに広げている。上げたドアを押さえたまま、内藤は言った。 「お前は来なくてもよかったのに」 「だって、私だけ遠慮するっていうのもなんかね」 「壱子も来てねえだろが」 「壱子は、袴田とは関係ないじゃない。  だいじょうぶよ。  さっさと済ませましょう?」  ねっ、と加奈は手をはたいて振り向いた。加奈の笑顔につられて、仕方なく内藤は頷いた。  思ったより荷物は少なく、昼間だったこともあり、あまり人目につくこともなく、手早く運び出せた。
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