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コンクリートの先の海には、回転灯の赤い光が映っていた。その向こうに、鉛色の月が滲んでいる。
波に揺れるその月に、加奈は一瞬、目を奪われた。音のない、とても静かな光景に思えたからだ。
パトカーから降りてきた若い警官が、遠慮がちに加奈に会釈をする。
加奈は無言で、まだ熱を持っている銃を彼に渡すと、今、ドアが閉められようとしている救急車に乗り込んだ。
加奈はそこに横たわる男を見た。
彼は苦しい息の下、加奈を見て少し、微笑んだ。
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