終章 夜明け

35/36
1224人が本棚に入れています
本棚に追加
/453ページ
 加奈は、きらめく飛沫を脚に受けながら、大きく伸びをする。ワンピースの下の伸びやかな肢体が、強い朝日に透けて見えた。 「―忘れねえんだろうな、眞人のこと」 「まあ、あいつ、あんまりそういうの表に出さねえからな」  二人にもわかっていた。そんな加奈を支えられるのは、常識を持って彼女を宥める人間よりも、どんな非常識な理論を振りかざしても、彼女を守ろうとする人間だということを。  海一面に広がっている金色の波を見つめている加奈を、頬杖ついて見ながら内藤は、ぼそりと呟いた。 「まあ……加奈が幸せならそれでいいけど」 「心にもないことを」  即効茶々を入れた祐馬に、やかましいっ! と怒鳴り返す。
/453ページ

最初のコメントを投稿しよう!