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 それでもこれが夢だと信じて、僕は震える左手で彼の背中に一瞬だけ触れた。  冷たい背中の硬い背骨が僕の中指に当たった。  それだけで僕は感無量だった。  文学部に進むきっかけを与えてくれた、勝手に恩師として崇めていた彼が今目の前にいる。 「今の僕があるのは、あなたのおかげです……」  そう彼の背中に小さく話しかけると、彼は少しの間だけ書く手を止めて後ろを気にしているようだった。  それ以上話す言葉が見つからず、僕は軽く礼をして元いた席に戻った。
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