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『これからも僕、たくさん怪我して先生に手当てしてもらいますね』
そう言って除けた胡蝶に、このど阿呆、と突っ込み乍手当てを終える。
運が良いのか悪いのか不明だが、この男は頻度こそ多いが、怪我の程度は比較的軽い。
今回もまた軽傷で済んでいて、内心、安堵の息を洩らす。
「頻繁には御免だが、怪我した時は此処に足を運べ。
致命傷でない限り、治してやれる……但し前述した通り、怪我の回数は減らせ」
「わあ、先生頼りになる」
「あのな…頼り過ぎるなよ。
私に、致命傷は救えない」
そう言って、伸ばした手で胡蝶の髪をぐしゃりと乱す。
嘗て、生意気な弟にそうしたように。
「絶対に生き残って、この城を抜け出せよ。
私はもう、帰れないからな」
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弟と胡蝶さんを重ね、珍しく寂しげな紫澄夜。
帰りたい訳ではないけど、時々家族のことは思い出しています。
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