感謝を貴方に

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 このお城に何等かの理由で迷い込み、脱出を試みるのが探索者。 そして、思い入れの物を壊されると、死んでしまう。 シスイさんの話を聞き、ポーチに眠る物を布地越しに握り締める。 お裁縫を学び始めた頃に義兄さんから貰った、ワタシの名字と揃いのネフライトが嵌め込まれた裁ち鋏と、ソーイングセット。 ――これだけは、絶対に壊されないようにしないと。 「それと、君にも私と同じ様に異能が備わっていると思うのだけど……どんな力か分かるかい?」 「うーん…?」  意識を研ぎ澄ませてはみたけど、どうしてもぴんと来ない。 もしかしたら、何か切っ掛けがないと、出来ないのだろうか。 でも、そう思うと、初めて会ったのがシスイさんで本当に良かったと思う。 訳も分からない儘、命を落としてしまっていた可能性だって、有り得ただろうから。
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