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アリシアとも縁の深い祖父母の親友、その養女であるだけに過ぎぬ、罪なき少女の『死』を。
無論、アリシアはその要求を頑なに拒否。彼女は心なき権力者に刃を向ける決意をしたのだ。
故郷である西方の宗教都市──聖都グリフォン・テイルを支配する大聖堂に属し、罪なき少女の『死』を餌にしてまで政争に明け暮れる高僧達に。
だが、その決意の代償はあまりにも大きかった。
二派に分かれて政争に明け暮れる大聖堂、そしてアリシアら騎士隊の三つ巴の戦いの末、政争の最前線にいた二人の高僧が死に至った。
そして、アリシアは騎士隊の代表として、責任を問われる形で故郷を『追放』されたのだ。
それが二ヶ月前。旅立ちの契機となった出来事である。
その日より、アリシアの夜毎の自問が始まったのだ。
彼女とて、セリアを守った事に関しては何の後悔もない。騎士として罪なき少女を守っただけに過ぎぬないのだから。
騎士とは防人である。この世に存在する様々な悪意より、人々を守る貴人。それ故、騎士は何よりも人々の幸福を──公益に重きを置いた行動を求められる宿命を背負う義務がある。
だが、今の自分はどうか?
少女を守るために奔走した結果、大聖堂の中核を担う二人の高僧を死に追いやり、それによる混乱を聖職者らのみならず街に住まう一般の人々にまで波及させたてしまったのだ。
そう、傍目から見れば、騎士の存在意義とは逆の結果を出しただけに過ぎぬ。
自分に与えられし、高位の騎士に与えられる『聖騎士』の称号。
それが今の自分にとって如何に重く、如何に不釣り合いか。
アリシアにとって、この二ヶ月の旅路は、おのれの無力という現実への直面を余儀なくされた日々であると言えよう。
まるで茨の中で眠っているかのような、そんな痛みを伴った事実との──
「祖母上様──もし貴女なら、どのような答えを導き出されていたのでしょうか?」
聖騎士は夜空に問いかける。
ありもしない、答えを求めて──
少女は震えていた。
悩める女聖騎士の隣の部屋。アリシアと同じ空と月を眺め、彼女もまた苦悩していた。
──どうすれば『贖罪』となるのかを。
黒髪の尼僧セリアは、両の腕で震えるおのれの体を抱きしめていた。
肉の下に流れる血、その源流たる人物の恐ろしさを実感して。
彼女の祖母にして、その始祖の名は──ソレイア。
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