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その決意の日より、二年ほど経ったであろうか?
色々な人達の協力と支えのもと、着々と復興を進めていたグリフォン・アイの街が──黒い甲冑の一団による襲撃を受けたのは。
街は焼かれ、復興の協力者は次々と奴らに拉致された。
街を守衛する騎士隊の人達も、優しき僧たちも、破壊された建屋を修繕する力自慢の市民たちも、そんな彼らを労う町娘たちも、そして──自分自身も。
四方を鉄の格子で補強された分厚い幌付きの馬車に押し込められて数日間。何処かもわからぬこの場所へと連れてこられたのだった。
そして今、自分が居るこの牢も──元々は数名の町娘らとともに幽閉されていた場所であったのだ。
だが、ある時を境に一人、また一人と看守に連れていかれ、姿を消していった。
彼女らがその後、如何なる運命を辿ったかは知らぬ。
──こうして自分は取り残された。だが、それは長き孤独なる時間の始まりでもあった。
昼も夜も解らぬこの場所で、会話する相手はなく、唯一の他者との関わり──外部との接触と言えば定期的に運ばれる食事の際、番の者との僅かな、無言でのやり取りのみといった有様。
書を読む事も許されず、単純な作業義務すらも与えられず、外部の物音すら聞く事も、時刻を知る事すらも叶わぬ。
ただ漫然と時が過ぎるのを待つ。
虜囚の日々は日に日に心を蝕み、麻痺させていった。
かつて、日を追うごとに同房の仲間たちが連れされるのを目の当たりにしていく中で抱いた恐怖──自分がいつ、連れ去られるのではないかという事すらも、考え至らぬ程に。
こうして記憶や自我は意味を失い──そして鈍化していった。
それは、正気に戻りかけた今の彼女にとって極めて耐えがたい苦痛の記憶であった。
だが、額の傷と、その痛みがシンシアの心を正気へと繋ぎ止める。
錬金術師の少女は懸命に頭を振った。忍び寄る狂気を振り払うかのように。
そして、思案する。
どうして私達が拉致される事となったのか?
そして、自分達を拉致した実行役たる、黒い甲冑の集団──彼らは一体、何者なのか?
苦悶に満ちた記憶の荒波を掻い潜り、彼らに関する情報の断片を思い起こさんとする。
「確か、奴らの姿が見られるようになったのは──そう、二年ほど前だったか」
二年前と言えば、王都で大きな政権簒奪劇が起こった年である。
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