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「──随分と強硬だな。彼ら貴族連中だって自分を支持してくれる貴重な連中だろうが。そのような真似をして支持が離れるとは考えぬのか?」
「そもそも、この国の貴族らは大半が古からの土着の身分。王命に背けば権限の後ろ盾を失い、野に落ちる儚き代物にございます。ですが、それは同時に戦勝後の地位が保障されると同義。この度の難民支援による金銭的損失など、後でいくらでも回収が可能な訳です。しかしながら、そのような事情は民には全くの無関係。ならば貴人の義務として、この程度の痛みくらいは受けてもらわねば不公平だとは思いませんか?」
尼僧の声に表情に、迷いの色彩は一切なかった。
戦士は知っていた。そのような声を発し、そのような顔をする人間に共通した特徴を。
──『覚悟』を決めた人間。例えるならば、おのれの理想の為に戦地の赴く騎士。嘘や虚偽を語る者には決して宿る事のない鋭い光が、その両の瞳に宿る。
「……その辺りの駆け引きは、既に決着済みという訳か」
強烈な覚悟の光に射抜かれ、男は圧倒されるほかなかった。無意識のうちに納得の言葉を吐き出す。
難民たちは元々、自由を求めて東から逃れて来た者達である。西の人間を、セリアを信じるほかに選択肢は存在せぬ。
だが、彼女の真摯な態度は、その信用を強烈に補強していた。
納得し、頷いてみせる難民たちの顔を見回し、セリアは言った。
「貴方達を西に受け入れるに際して、色々とお尋ねしたい事がございます。その内容は現在の東の情勢について──貴方達の生活状況や、差別や迫害の内容、あと可能であれば、この数年間に施行された法や、主だった貴族たちの動向などに関して、詳しく教えて頂ければと存じます」
「それが、西へ入るための交換条件という訳ですか?」
「そう考えて頂いて結構です。やはり東の情報を仕入れるには、直前までそこに住んでいた人達に尋ねるのが一番ですから」
察しの良い逃亡者の若者の問いかけに、セリアは柔和な笑みをもって答えた。
「私もかつて、自分の中に流れる血が原因で差別と迫害を受けて故郷を追われた過去を持っております。私がこうして立ち直ることができたのも仲間の支えがあってこそ。その仲間が必死になって共に戦ってくれて、世の中を変えてくれたからこそなのです」
彼女は思い出す。
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