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遠藤は慌ててポケットから自分の携帯電話を取り出した。迷うことはなかった。なぜならそれは生徒のためなのだから。
彼は女児の手に自分の携帯電話を握らせると、「ほら、がんばれ」と送り出した。
背中を押された彼女はトラックのほうへ向かうものの競技に戻ろうとはせず、退場門のほうへと進路を変えた。
おや?と思いながら見ているうち、その姿は他の生徒にまぎれて見えなくなった。
「おいおい、どこへ行くつもりだ。借り物競争の途中だろう……」
怪訝な顔で呟く彼には知る由もなかった。
この後、自分の携帯電話が誰の手に渡るのかを。
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