第1章

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 そんなことを考えていたら思いがけないチャンスが到来した。  私は大急ぎで岡野さんを呼ぶ。私が受け持つクラスの生徒だ。彼女はおとなしく無口で、先生の言うことをよく聞くいい子だ。  メモ用紙に彼への伝言を書き、それを二つ折りにして岡野さんに渡す。 「いい。何も言わなくていいから、これを遠藤先生に渡してきて。今すぐ」 「はい」と肯いて走り出そうとする彼女を慌てて呼び止めた。メモ用紙を渡した後に取るべき行動を耳打ちしてから背中を押してやる。  一目散に駆けていく後姿のその先に、総一郎の姿があった。
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