第1章

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 スタートの号砲が鳴った。横一列に並んだ子供たちがいっせいに走り出す。その姿を見届けてから、遠藤は教え子たちのほうへ視線を戻した。  次の競技についての簡単な説明をしていると、背後から誰かが腰のあたりを叩いた。  振り返ると女児がいた。体操服のゼッケンには岡野とあるものの、彼はその顔をおぼろげにしか覚えていない。  どのクラスの生徒だったかな……と考えていると、不意にその子がメモ用紙を差し出した。それで遠藤は得心する。  彼は急いでそれを受け取ると、広げて見た。  そこには大きな文字で〝携帯電話〟とだけ書かれていた。
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