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映し出された十枚のディスプレイには、一枚に一人ずつ、眠るケイトと蓮司、それに知らない少年が四人、他に空のベッドが四つ映っていた。
「……俺達が今いる世界は、ディスプレイに映っている人達が見ている夢を統合した世界。……スリーピングワールドなんだよ」
スリーピングワールド――
聞きなれない言葉を、ケイトは只々脳内で復唱する。
「信じられないか? ――ここが夢の中だなんて?」
「ええ……信じられないわ。あ、……でも空飛んでたし……頭が変になりそう」
「それはマズイな。……そろそろちゃんと理解しないとダメかもしれない」
そう告げると蓮司はまたコンソールを操作する。
すると、正面の消灯していたディスプレイに何者かが映し出された。
「さあ博士。……ちゃんと連れてきましたよ?」
「……ああ。そこにいるのは西園寺ケイトさんだね?」
ディスプレイ越しの見知らぬ研究者に、突然名前を呼ばれたケイトは、驚いて「は、はいっ?」と素っ頓狂な返事をする。
「まあ、そう驚かないでくれ」と少し寂し気に笑うと、その男は静かに話し始めた。
「私はこの研究所……ああ、こっちにある赤坂私設研究所の所長をやっている赤坂という者だよ。本当は、初めまして、じゃないんだけど、そっちでは初めましてだよね?」
「はい。……初めてお目にかかります」
そうか、ここの記憶がちゃんと消えているみたいだね――頷きながら、今度は視線を蓮司の方に向ける。
「さて加藤君。……昨日の夜に交わした約束を果たそうか。……君はちゃんとここに西園寺君を連れて来てくれた。これで半数以上、つまり今回の実験で六人がその世界の中にいることに気付いた訳だ。……次は私の番だね?」
「はい博士。……約束通り、これで実験は中止。そっちの俺達を今すぐ覚醒させてください。……あと、ちゃんとケイトに説明してやってください。……博士が作り上げたスリーピングワールドの正体を」
まあ……元々あと二時間で覚醒させるつもりなんだがね――そう言ってから目を深く閉じて一度頷くと、博士はまた静かに語り始めた。
その内容はケイトにとって想像を遥かに超えるものだった。
スリーピングワールドとは、ラボで雇われた高校生のアルバイトが、数時間眠っている間に見る夢を一つにまとめて作り上げた世界である事。
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