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但し、夢の中のベースとなる世界は、プログラミングによりあらかじめシステム化されており、被験者は自分を取り巻く環境のディテールを不自然が無いように再現しながら生活していた――そうする事でいかに夢の中だと気付かないか、最も多感で感覚の鋭い年代である高校生で検証していた事。
そしてスリーピングワールドは、外部のオペレーターの介入が可能であり、リアルタイムモニタリング、被験者の強制排出、時間が流れる速度の調整(例えば内部では現実世界の百倍の速度で時間が流れている)、リプレイ、ループなども行えること。
最初に訪れる感覚を馴染ませるための睡眠深度の浅い<レイヤー1>――ここで更に眠ることで見る夢の中の世界<レイヤー2>の存在。これは夢の中でまた夢を見るのと同じ――
「――<レイヤー2>こそ研究の対象でね。……睡眠深度が深くて、滅多に自発的に醒める事は無いんだよ。どんなに厳しい訓練でも、それこそ倫理に反するような実験を行っても耐えられるくらいにね。<レイヤー2>は、そちらのスリーピングタワーを利用して作っているんだ。……あそこで眠る人のほとんどは、過去にこの実験に参加してもらった人達のコピー体なんだよ。彼らの眠る力を使用して作る世界が、より深度の深い<レイヤー2>だ。……君達もそこにいたんだよ。スリーピングタワーの事は知ってるだろ?」
名前に覚えが無かったが「ゴーグルをつけて寝てたとこだよ」と蓮司にフォローしてもらい、ケイトは納得して頷く。
すると蓮司が博士に向ってやや語気を強めた。
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