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「博士、俺は夢の中だろうと何だろうと、あいつらがした事を絶対に赦さない。……それに予測不能の事態だからって、そっちでちゃんと監視していれば防げたはずです!」
「本当にすまなかった。……先に帰らせたが、あの少女達が最初から悪意を持っていたなんて知らなかったんだ。<レイヤー1>で襲撃して、更に自発的に覚醒する方法まで知ってるなんて……本当に異常事態だったんだ」
そもそも今回の実験は<レイヤー2>での簡単な生活試験。
十名の被験者にはそれぞれ個別のストーリーが用意され、安全かつ円滑にスリーピングタワーに導く予定だった。
それなのに――
蓮司はディスプレイに映し出された、四つの空いたベッドを順に睨む。
今は四人の顔をしっかりと覚えているが、向こうで覚醒した時には、システムの制限により全ての記憶が消えてしまうだろう。
白い部屋のディスプレイを全て消すと、シンと静まる中、二人はそっと寄り添う。
博士の操作による強制覚醒モード発動まであと数分。
この世界の消滅を静かに待っていた。
隣で不安そうにしているケイトの手をそっと握ってやる。
覚えていなればいい――そんなの、何の解決にもならないじゃないか?
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