スリーピングワールド -ナイトメア-

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 夢と現実の境界なんて、曖昧なのだという。 『ここ』が現実世界であると、誰が証明できるだろうか。  なのに人は『夢ではない』と認識している。  それは即ち――眠りから醒めた世界、だから現実であると逆説的に考えているに他ならない。  ではもし醒めない夢の中にひとたび堕ちたら、人はどうなるのか。  そこで人は、夢と現実の区別がつくのか。  この答えを探し、幾十年におよぶ研究の末――人工的に眠りの世界を作るシステムを開発した者がいる。  これから、決して規模は大きくない、だが最新鋭の設備を揃えた赤坂私設研究所では、ある実験が行われようとしていた。  実験に参加する被験者は十人。  みな高校生である。   *** 「――知らないわよ、そんな事!」 「しらばっくれんじゃないわよ! 私の『彼氏』に散々付きまとって、いい加減にしなさいよ!」  だから何にもしてないってば! ――そう必死に訴える少女は、決してウソなどついていなかった。  なのに両手を何者かに後ろから拘束され、更に真正面からこの女に前髪を思いっきり掴まれている。  少女はこれから想像もつかないほど惨たらしい仕打ちを受ける事になる。  薄暗いこの密室で。  取り囲む四人の女子生徒――全員見覚えがないが、リーダー格の女だけは同じ学校の制服を着ており、それ以外は知らない学校の制服だった。  今日、この日は少女が通う高校の秋の学園祭の日。  少女のクラスでは、コスプレ喫茶の模擬店をやっており、午前中から大盛況だった。  この学校は共学で、クラスの男子生徒もちゃんとコスプレで参加している。  少女のひと際キュートなメイド姿の横に、ブラックのスーツに身を包んだ執事風の少年が付きそってかしずく。  この二人、特に一緒にいる必要はないのだが、午前中ずっと離れずに接客を行っていた。  生まれた時から家が隣同士の、超に超がつく幼馴染み――クラスも一緒、いつも傍にいる。  傍から見ればお似合いのカップルなのだが、当人同士はそんな気もなく、別に付き合っている訳ではなかった。  午後に入ると二人は休憩時間中、店の宣伝もかねて衣装を着たまま校内を歩いていた。  黒いシャツにホワイトのエプロン。
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