甘いのくださいっ!坂下&香澄編

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胡桃と和菓子職人である櫻井悟は出会ってから一年経った今日、結婚した。 正直、驚いた。 二人が付き合うまでもすったもんだあって中々だったし漸く、丸く収まったとは言え、こんなにも早い段階で結婚するなんて…。 何かにつけて優柔不断の胡桃が今回に限っては自分自身で素早い決断をし、和菓子職人について行くと決めたらとっとと会社を止めて花嫁修業として櫻やの手伝いをするようになりそして、今日という日を迎えたのだ。 今まで何かにつけて胡桃に相談されてきた私としては嬉しい気持ちと、正直に言うと…ちょっと複雑な気持ちとがいりまじっていたり…する。 「先、越されたなぁ……。」 と、呟いてみるものの隣に座る坂下さんは完全にカウンターに頭をつけて突っ伏している。 するとーーー 「はい、お待たせ。」 と、マスターがカクテルグラスをそっと置いてくれた。 「あれ?これジンライムじゃない…ですよね?」 目の前に置かれたのは綺麗な緑色したカクテルだった。 「ああ、ごめんね。今の君を見ているとこっちを出したくなった。同じジンベースだし、爽やかな口当たりで良いんじゃないかな。」 「へぇ……初めて飲むかも。」 繊細なカクテルグラスをそっと持ち上げ一口飲んで見る。 「うわぁ……ミントの味がする。爽やかな口当たりで飲みやすい。これ、何て言うお酒ですか?」 「AROUND THE WORLD。とても古いレシピでね、これを飲むと旅にでも行きたくなる……らしいけどね。」 そう言うと、マスターは別のお客さんの元へと行った。 「アラウンドザ・ワールド……ねぇ。」 確かにミントの味が飲む度に口の中に広がってとっても気分が良くなる。 旅とはいかなくてもどこかに行きたくなるような……。
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