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兎に角、薬飲ませなきゃだけど何かお腹に入れないと……。
冷蔵庫を失礼して開けさせて貰う。
「・・・・・・・」
飲み物以外ーーーいや、ビール以外、何も入っていなかった。
胡桃の話だとお母さん、有名な料理研究家とかって……。
私は万が一を想定して、レトルトのお粥を買ってきていた。
そして今がその万が一。
適当な器に移してチンしてみた。
一通り、用意すると坂下さんが入っていった部屋に向かう。
そして、ノックした後にドア前で声を掛ける。
「坂下さん、お薬飲みましょう。その前に軽くでも食べれますか?」
「ああ……悪い。そっちに行くよ。」
「いいですよ、持ってきてますから、入りますよ。」
私はお粥を乗せたトレイとは反対の手でドアノブに手を掛けるとそっと押し開け部屋に入った。
部屋に入ると10畳くらいの所にポツンとキングサイズのベッドがあって、他はこれといって物がなく、とてもシンプルな部屋だった。
取り敢えず、ベッド際にお粥を持っていく。
「坂下さん、起き上がれますか?少しだけでも食べてお薬飲みましょう。直ぐに楽になりますから。」
「う、うん……、ごめん。」
いつもの爽やかさは微塵もなく熱のせいなのか充血した目をトロンとさせてこっちを見ながら言う坂下さん。
起き上がらせるとクッションやら枕を腰に入れて座らせた。
「食べれますか?」
「う、ん……。」
お粥を小さな器に取り分けて、スプーンと共に渡すけれど、中々、口に運ぼうとしない坂下さん。
しゃあないなぁ………。
「ほら、貸してください。はい、あーんして。食べなきゃ、薬飲めないでしょ。」
坂下さんから器とスプーンを取り上げると、私はふうふうしながら、口元へ運んでやった。
パクっ。
おっ、食べた。
もう一口。
パクっ。
なんか、餌付けみたい……。
イケメンを餌付けかぁ…
ちょっと、面白いかも。
イヤイヤ、私、考えが危ないよ。
お粥を半分ほど食べた坂下さんは、私が用意してきた風邪薬を飲ませると直ぐに眠ってしまった。
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