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「あのぉ、仰ってる意味が分かりかねるーーー」
坂下さんは、小さなため息を一つ吐くと
「だから、今、俺がこんなにもドキドキしているのは春川さんの事が好きなんじゃないかな。」
えっ………好、き?胡桃一筋の坂下さんが私の事を?
って言うか何、
その、じゃないかな?ってのは。
「嘘でしょ?」
「嘘じゃないって。俺だって正直、今、戸惑ってる。この気持ちに。目の前の春川さんが可愛くて仕方ない。」
うっ……ちょ、ちょっと止めてよ……そのストレートな表現。
「坂下さん、これあれじゃないですか?ほら、ナイチンゲール症候群。」
「ナイチンゲール症候群……ああ、患者と看護士に芽生える愛ってやつね。」
「そうそう、それですよ。坂下さん、高熱だったし、まだ頭もしっかりしてないんですよ。ねっ?」
「うぅん…。いや、だけどそんな一時的な感情じゃない。俺、確かに春川さんが好きだよ。」
あちゃぁ……。
この人ってこんなにも思い込みの激しい人だったとは……。
「だけど、ほら、胡桃。胡桃のことずっと諦められなかったじゃないですか?」
そうだよ、この前の結婚式の後だってウジウジしてた癖に。
「うん、確かに胡桃ちゃんの事、中々諦められなかった。だけど、二人がちゃんと付き合いだして結婚するってなってからは、もう気持ちに整理はついていたよ。まぁ、この前の結婚式の時はグダグダしちゃったけどさ。完全に吹っ切れてる。それにさ、さすがにあの二人のバカップルぶり見てりゃ、いい加減諦めるよ。」
バカップルって……確かに。
だけどーーー
「だからって私の事を……好き……とか…。」
だって、どう考えても私達ってただの飲み友達でしょ?
「だけど、今、ハッキリ気付いたんだ…この気持ちに…。」
「でも……。」
そんな事、急に言われたってねぇ…。
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