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って、
「もしかしてっ、あなたが和菓子作ってるの?」
「なんだよ、急にでけぇ声出すなよ。見たまんまだろ?こんなんきて、会社行くかよ。」
「ですよね……って。あっ、いけない。会社っ。私、休憩中だったんだ!」
慌てて腕時計を見るとーーー
「うわぁ。やばい。もう休憩時間とっくに
終わってるじゃない。じゃぁ、これで失礼しますーー」
って、行こうとしたら、手を掴まれた。
「な、なに、するんですか?は、離してっ。早く戻らなきゃ。」
「やだね。こっちの話は終ってねぇだろ?」
「はあ?そんなこと知りません。ちょっと、本当に止めてくださいって。人も見てるじゃないですかっ。」
花見がてら川沿いを散歩している人たちの視線が集まっていた。
「大丈夫でーす。痴話ゲンカですから。ご心配なく。」
彼があまりにもにこやかに言うのでこちらを心配げに見ていた人もホッとした顔で離れていく。
「なに、勝手な事言ってるんですか。私、会社に戻らなきゃ。」
「なぁ、お前の会社どこ?」
「えっ、なんであなたに教えなきゃいけないのよっ。いう必要ないと思いますけど?」
「じゃ、手離さない。」
はあ?
「ちょっと、悪ふざけ本当に止めてください。」
「悪ふざけしてる顔に見える?」
と、顔をこちらにぐっと寄せてくる。
うっ、その整った顔で見つめられるとーーー
それに言うまで本当に手を離してくれそにない。
「わ、わかりましたっ。すぐそこの文具メーカーの会社で事務やってます。ねっ?だから戻らないと。離してもらえます?」
不服顔で睨む彼。
「嘘じゃねぇだろーな?」
「この状況で嘘つけるほど器用な人間じゃありません!」
「確かにな。」
その瞬間、漸く、ぱっと手を離して貰えた。
「ほら、行けよ。」
「言われなくても行きますっ!」
あー、なんかムカつく。
だけど、今は急いで戻らなきゃ。
私は会社へと急いだ。
後ろの方で、
「今日、帰りに待ってるからなっ。」
と言う声も聞かずに、ただ、急いで走っていった。
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