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「遅くまでご苦労様です」 帽子を脱いで、素早く股の間に置いた。 まだ、”あれ”は冷静さを取り戻してはいない。 「広島での地方公演で、使用するアイテムが足りないということで、 遠征メンバーから連絡を受けて探しているのですが、 グラン・マウントのヘッドってどちらにあるか、ご存知でしょうか?」 「あー。それだったら、 確か3階の大道具倉庫にあったかと。入って3列目の右の棚です」 「そうですか、ありがとうございます助かりました」 カトウマユカは、踵を返し部屋から出ていこうとする。 うまく追い出せて、はあと安堵のため息を吐き出した。 「あ、アダチさん」 くるりと彼女が振り返る。 ヒールを鳴らしてこちらへとまっすぐに、歩いてくる。緊張が走る。
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