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「うん、やっぱりマフラーが似合いますね。格好良いですよ」
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
そのとき、アナウンスとともにホームに電車が滑り込んできた。
彼の背後で、扉が開く。
彼は反射的に電車に振り向き、しばらくその電車を眺め続けた。
「あ、そうだ。……めーちゃん」
やがて、自分がこの電車に乗るつもりだったことを思い出して、彼はためらうことなく車両内に脚を踏み入れた。
見計らったように、発射のベルが鳴った。
ふと、彼がホームを振り返った。
「ねぇ、君は誰?」
すべてを遮るように、扉が閉まり、電車が動き出す。
遠ざかっていく彼に向かって、私はつぶやく。
――ありがとう。
そして、
――さよなら。
出会えて良かった。
君が………
………好き。
「君は、実に馬鹿だな」
呆れたような声が、私の背後から聞こえた。
振り向くと同時に、私はテトの胸に抱きしめられた。
「テトぉ……」
私、笑えていたよね。
ちゃんと、最後まで笑って見送れたよね。
だから……
だから……
……今だけは、泣いてもいいよね。
「うん」
頷いたテトの胸の中で、私は、子供のように大声で泣いた。
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