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表紙イラストの謎~いろいろ台無し気味な番外編~
切ない雰囲気にあふれた素敵な表紙絵に隠された、驚愕の謎
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「あ…えっと…」
ぼんやりとして、何が起きたのか理解できていない彼に向って、もう一度にっこりと笑顔を浮かべる。
「マフラー、忘れちゃダメですよ」
「マ…フラー……?」
立ち尽くした彼の首に、かけられたマフラー。
私は、初めてこのマフラーを買った時のように、彼の首に、この手で、マフラーを巻いた。
「うん、やっぱりマフラーが似合いますね。格好いいですよ」
「あ、ありがとう。でも、これ・・・まふらー?」
「手作りです」
「自家栽培って意味で?」
「どういたしまして」
「いや、どういたしましてじゃなくて、僕の首にあるのこれ、明らかにネギなんだけど、どういうこと?」
「私も表紙絵をまじまじと見るまで気づきませんでした」
「気づいてよ!」
「いやぁ、イラストの切ない雰囲気に流されて衝動的にダウンロードしちゃいまして。それにしてもpiapro(ピアプロ)って素晴らしいシステムですよね」
「作者コメとか読んだらすぐにわかったでしょ? てか、ほどいてよ。鼻と目にすっげーツンと来るんだけど」
「風邪に効きますよ?」
「それ迷信だし、僕まだひいてないよ!?」
そのとき、アナウンスとともにホームに電車が滑り込んできた。
彼の背後で、扉が開く。
「うわ、電車来た」
「乗らなくちゃ」
「ネギ巻いたままで!? くそ、ほどけない!」
見計らったように、発車のベルが鳴った。
「げ」
「行かなくちゃ」
「んなのわかっとるわい!」
「キミが優しいことも知ってる」
「無理やり歌詞に絡めて、ヒトの優しさにつけ込むんじゃない!」
「……この手を離してよ」
「離すのはネギだ!」
出会えて良かった キミが好き
今だけでいい、私に勇気を
どさくさに紛れたっていい、今度こそ、私の本当の気持ちを、この人に。
「あのね--」
「とっとと行ってこんかーい!!」
ドゲシッと、突如現れたテトに彼が蹴り飛ばされた。
「うぎゃあああ!!」
思いっきりつんのめって、車両の中に突っ込まされる。
すべてを遮るように、扉が閉まり、電車が動き出す。
遠ざかっていく彼に向って、テトはつぶやく。
--micoさまへ、素敵な表紙絵をありがとうございました」
そして、
--ひどいオチだったね。
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