第10章

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「九条さんに伝えて下さい」 ひらり 細い指先を翻し 「よろしければ、蝶の標本を差し上げますって」 どこか芝居がかった調子で 天宮和樹は言った。 「どういう……意味です?」 僕が鈍感なのか。 それとも彼が 見た目通り突拍子ないだけなのか。 「そのうち――意味が分かるかもしれないし、分からないかもしれない」 言葉を濁したまま 今度こそすっと席を立った。
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