②ドウソウカイ

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「こないだテレビで詐欺や脅迫の特集をしててさ。その番組で自分もしくは家族名義で金銭を受渡目的専用の口座を作って、キャッシュカードをその犯人に渡して、自分は通帳で入金するってのがあったんだよ」  ……確かにほとんどの金融機関では通帳さえあれば入金はできる。  逆に相手は金を引き出すためだけならキャッシュカードと暗証番号を教えられていれば送金された現金を自由に引き出せる。  橘は俺の反応を見ながら続けた。 「それなら犯人側は口座から足がつかないし、金銭を送る側も家族の口座に入金するだけなんだから金額が大きくても銀行側からも不審に思われないだろ?」 「……なるほどな……。長期的に渡って金銭を送るんなら、その方法が普通に送金するよりいいってわけか」 「もしかしたら……他人名義に送金が出来ないような理由があったのかもしれない……。お互いの通帳に名前が残るとまずいとか…さ」 「それって……父さんが誰かに脅されてたってことか?」  橘の発言に思わず彼を睨んでしまった。  ……そんな……まさか……。  父さんに限ってそんなこと……。  第一そんな脅されるようなネタなんて思い浮かばない。 「……その可能性があるってだけだ。気を悪くしたなら謝るよ」 「いや…意見が欲しいって言ったのは俺の方だしな。貴重な話を聞かせてくれてサンキュ」  橘にそう返事をしたものの、俺の頭の中には送金相手と金額のことで頭がいっぱいだった。
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