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だって。
もしそのお金があったなら。
父さんはもっと高度な治療を受けれたかもしれない。
もっと長く生きられたかもしれない。
それに……俺だって。
こんな二浪もする必要がなかったのかもしれない。
さっきみたいに後輩に馬鹿にされることも……。
「……亜樹、あまり深く思い詰めるなよ。今はもう送金されてなかったってことはその件は片付いたって事なのかもしれねぇし。何年も前のことを今更掘り返したっていいことにならないと思うぞ」
「あぁ…そうだな……」
俺はぬるくなったビールを飲みながら、もしかしたら母さんの言っていたあの女とは父さんを脅して金を要求していた人間のことなのかと考え込んでいた。
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