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もうこのまま帰っちまおっかなぁ……。
いや、さすがに橘に最後に挨拶もせずに帰るのも失礼か……。
なんてグダグダ悩みながら一団とは離れてカラオケ屋の裏路地に何の気なしに足を向けると――――。
―――――カシャっ
―――ん?何かのシャッター音?
一瞬裏路地の奥が光った気がする。
誰かがこんなところで写真でも撮ったのか?
音と光がした方に近づいていくと、うっすらと闇の中に人影が見える。
スマホの画面に照らし出されている服装は……。
「おい、井手か?」
新庄と話していた時にじっと見たからよく覚えている。
「お前何やってるんだ?橘が探してたぞ」
「…………っ!」
「――は?お、おいっ!」
スマホを下に向けて足元辺りを撮っていた井手に声を掛けると、彼は何も言わずに走り去ってしまった。
何をそんなにビビってんだ?
俺が急に声をかけたから驚かせちまったのか?
再び訪れた薄暗い闇と静寂の中に一人取り残された。
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