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井手はこんな場所で何をしていたのか……。
裏路地は街灯もなく、両脇のビルから漏れる明かりだけ。
人通りも全くなく薄暗い。
周りをよく見るためにスマホのライト機能を使って辺りを照らした。
すると。
さっきまで井手がいた当たりの地面に何か黒い塊があるのが分かる。
なんだアレ…かなり大きいし自転車じゃなくって……。
おいおい、まさか……。
……人が倒れてる!?
慌てて駆け寄ると、その影が女性だと分かった。
それもその服装は記憶に新しく……。
「う…そだろ……」
“ソレ”が何なのか分かって、あと3歩ぐらいのところで足を止めた。
いや、足が、全身が。
これ以上進むことを拒んで固まった。
“ソレ”はさっきまで生きて動いていたはずが、今はピクリとも動かない。
ほんの数分前までうるさい位に喋っていた赤いグロスを塗りたくった唇は大きく開き。
ぽっかりと空いた口内には全てを吸い込みそうな闇が広がっている。
その口元から垂れた涎(よだれ)が頬を伝って地面に落ちていた。
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