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横向きになった体は何かを求めて。
何かから逃げ出そうと。
右手はアスファルトをひっかき血が滲んでいる。
ネイルで飾られた爪はうげて少し先に落ちていた。
左手はジャラジャラしたネックレスで飾られた首元に伸び。
何かを外そうとしているようなのに。
でもまるでその首と手との間に何かがそこにあったかのように隙間がある。
首。
女性らしい白くて。
細い頸部(けいぶ)。
俺のスマホのライトにキラキラとネックレスが光り。
クビの喉元が。
黒く鬱血(うっけつ)していた。
長時間“何か”をきつく巻かれていたかのように。
“何か”を外そうともがいたのか顎には傷が入っているのに、鬱血した首元には不思議と血や爪痕はなかった。
ただ黒い。
その黒さで傷が見えていないだけかもしれないけど。
顔は……よほど苦しかったのか眼球が飛び出しそうに見開かれ、血走っていた。
先ほどの彼女とはもはや別人だった。
「う…うわぁああぁー!」
目の前の現実を否定するかのように出た絶叫は、自分の声じゃないみたいだ。
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