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闘病生活に文句も弱音もはかずに頑張る父さん。
それを支え俺のことも心配してくれる母さん。
そんな二人に育てられて、俺は幸せだと思っていた。
それがまやかしだと気付いたのは、父さんが再度危篤状態になった時。
いよいよ危ないと医者に言われ、母さんも俺もあの骨と皮だけになった細い体で今までよく頑張ったなと逆に父さんを尊敬した。
もう十分苦しんだ。
これ以上の延命措置を断り、後は父さんの生命力に任せることとなった。
それはこれ以上手術代を捻出できないのも理由にあったけど……。
それを言い訳にしてるわけじゃない。
医者の最終宣告を聞いたときに、母さんの見せた安堵の表情を浮かべていたとしても。
それは父さんをもう苦しみから解放して上げれるからだ。
そう自分に言い聞かせつつ、母さんと二人で父の身辺整理をした。
いつ“お迎えがきても”いいように。
俺は父さんの遺影用の写真を選別した。
父さんは病気になってずっと入院生活を強いられたため、会社を依願退職したけど、働いていた時は生き生きとしていた。
その頃の家族写真の中から一番いい笑顔で写っている父さんを見つけ、それでいいのか確認をしてもらおうと母さんを探した。
母さんは父さんの部屋で通帳やら土地やらの権利書とかの遺産整理をしていた。
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