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母さんに声をかけようとしたけど、「全部あの女のせいだ…」と何かをみてぶつぶつと呟いている姿を見て、とっさに部屋の外に隠れてしまった。
もしかして…父さんは浮気か何かをしていたのか?
母さんが部屋を出た後で、不思議に思って母さんが見ていた棚を後からこっそり見ると、そこには俺の名前の通帳があった。
決まった金額が毎月1日に振り込まれていて、毎月その金額が全額引き出されていた。
何冊目からしく、始まりは分からないけど、数年前に入金と引き出しがされて終わっている使い終わった通帳のようだった。
俺の為の通帳ならば入金してすぐ引き出すのはおかしい。
それじゃあ貯金の意味がない。
その通帳が何なのかしばらく見つめても分からなかったけど、両親には俺の知らない何か秘密があることだけは分かった。
この通帳は一体なんなのか。
母が言っていた人物は誰なのか。
今まで幸せだと思っていたのは………。
―――ただ何も知らなかっただけなのかも知れない。
俺は無知ゆえの愚かさに救われていたのか。
周りのいう事に疑問を持たずに流されていれば。
気楽で安穏で暢気で無責任に生きていられた。
……だから俺はその事実から“今まで通り”目を背け、何も見なかった振りをした。
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