第11章

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「…あのさ、確かに僕も大人気なかったけどね」 「ああ?なんだよ」 ジトッと重たい視線を、今俺が通ってきた経路へ移して呆れたように肩を落とす藤見。背後の店内の様子を見れば、薄明かりの中、先ほどまでは1ミリの狂いもなく綺麗に置かれていたはずのテーブルや椅子などが物の見事に全て倒れている。 ま、倒れている、っていうか、俺が倒したんだけどさ。 ふん。全く…自業自得だ。 「はあ……ほんと君ってゴジラか何かかい?絶対、人間じゃないだろ。…まあいいや。今度からはせめてモノは避けて歩いてくれよ…?」 「テメーがつまんねえことするからだろうが」 「えー。僕のせいかい?ひどいなーもう」 「…チッ」 コキコキと首を回しながら凄むが、このおっさんには全く効きやしない。 実年齢は知らないし興味もないが、本当は人間じゃないっていうならコイツのほうがそうだろ。見ようによっちゃ40近くも見えるし、別に20代後半と言われても納得してしまいそうな雰囲気を持つこのおっさんは、いつまで経っても老けない。 心臓に毛が生えているコイツが、心から感情を露わにする所なんか見たことないしな。 だから、この大層立派でさも高そうな藤見のお気に入りの店の骨董品に何かしら手を出したら、ちょっとは普段見れない顔が見れるかと思ったんだが…やはりいつも通り、一つも堪えた様子なく、「後で元に戻すのが大変だ」とか薄いリアクションでつまらないセリフを吐いている。 そしてグッと体を伸ばすように腕を広げ「うーん!」と唸った後、両手を腰に当ててこちらを向いたおっさんは 「で。本当に何の様かな?」 「とぼけてんじゃねえよ」 「いやいや。ほんとに分かんないんだって」 どうやらマジで心当たりがないのか、再びさっきと同じことを言い首を傾げる。 …………はあ。ということは、またあれか。 このおっさんが身に覚えがない状況で、鉄火が機嫌が悪いとなれば思い当たる原因は確実にたった一つだけだ。 「チッ…」 「えええー。もうなに!?いきなり機嫌悪くならないでよ。確かに最近物忘れヒドくなってきたから気にして」 「今から付き合え」 「って…え……?」
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