第11章

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__kirijo side. 久しぶりにあの人の機嫌が悪いらしい。 …正直そんなもん知るかって話だが、周りの連中にとっては決してそうではないらしく、俺にぎゃーぎゃー泣きついてきて鬱陶しいことこの上なかった。 まあ、いつもならビビって近づいてこねえような下っ端のガキ共が、初めましての挨拶の前に縋るように俺の目の前で土下座して懇願する姿は、見ようによっては面白かったのかもしれないが…。 ただ、そういう時、いつも面白がる奴がそん時にはいなかったから、残念ながら面白おかしくなんてことはなく、ただ数秒間時間が止まったような沈黙で包まれちまったがな。 『桐上さん!お願いします!助けてください!!』 『桐上さん、以前もあんな感じになった鉄火さんのフォローしてくれたんすよね!どうか今回も…』 『俺たち此処しか居場所ないんで、鉄火さんに追い出されたりでもしたら終わりナンすよ。マジでお願いします!』 『『『お願いします!!!』』』 「…チッ」 揃いも揃って綺麗に角度まで合わせて頭を下げるもんだから、逆に殴る気も失せて何もしなかったが、やっぱり一回ずつ蹴りあげときゃよかったかもと今になって思う。 面倒事を押し付けられてイライラするこの腹いせをどっかで出来ないもんか…な、と。 無意識にタバコに手が伸びて、思わず歩きながら一本口に咥える。こんな枯れ草を燻って吸った程度じゃ大して変わらないとはわかってはいるが、ちょっとは気が紛れるだろう。まあ、正直、その程度にしか吸ってないし、特別ウマイとも思っていないからな。 ふっと吐き出す煙を追いかけるように、空を見上げる。 視力の悪い俺には真っ暗な夜空が広がっているように思えるが、目の良い奴なんかはこの空にも小さな星の一つや二つ見えるんだろうか。 どうでもいい。しかし、時折ふと降って湧いたようにそんなことを思う時は誰しもあることだ。 空を見つつ思い返す。 確かに、あの鉄火のプライベートを知っている奴はあそこに入り浸る連中の中では俺とあのバカ啓一くらい、か…。
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