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まあ何であの人が機嫌悪いのかなんて、大体想像つく。
大方、また失敗したんだろうさ。
そんでもって、大層怒られでもしたんだろう。
全く…一体何回めだ。毎回、男どもから泣きつかれるたびに面倒くさくてたまらないが、放っておくと更に面倒くさいことになりかねない。
鉄火は自分の顔がどれだけ極悪人面か分かってんだろうか。
結局俺が出る羽目になるから、そうなるのは面倒だから八つ当たりを店の連中相手にすんなと言ったが、「お前が言うな」と言われ聞く耳を持たれなかった。
俺の場合は何も理不尽な暴力は振った覚えはないし、そもそも虫の居所が悪い時にはあまり店には行かない。鉄火が面倒くさいし、啓一の面みて更に苛立ちたくもないからな。
しかもついでに「普段、面倒事ばっか押し付けてくるんだから、こういう時ぐらいお前も動け」と、原因は自分にあるのに偉そうにそんなことも言われたっけか。
「…あーやっぱ、めんどくせえ」
バイクを使うほどの距離でもないからと思い、目的の場所まで歩いて向かっているが徒歩だと地味に遠く、正直だるい。
そもそも、鉄火はあの顔で乙女な部分がある。店をやっているのだって、あいつが料理好きで人好きなおせっかい野郎というところが大きい。
店開く前には、アイツん家に行くたびに飯を食っていたが毎回新作を作っては試食を俺にさせていたし。なんやかんや、憧れの背中を追いかけてってのもあって、あんときゃ乙女モード全開でキモかったがな。
…まあ、実際蓋を開けてみたら、開いた店に来る奴らは飯の良し悪しなんか分からない酒大好きの飲んだくればかりで毎日青筋立たせながら其奴らの世話してるけどさ。
しかし、前までは毎日のように男どもに怒号をあげていたが最近はそれもなくなったように思えたし、てっきり俺はソッチがうまくいっていて機嫌が良いんだと思っていたんだが…。
ま、それも、原因の張本人に聞けば分かることか。
ようやく着いたその扉の前で、俺は咥えていたタバコを消し潰した。
やっとついた目的の店の扉を俺が開ける前に背後から
「出来れば吸い殻をうちの前に捨てないでほしいんだけど…」
と声を掛けらた。
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