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泊まっていけたらどんなにいいだろう。
二人っきりで夜を過ごせば好きな気持ちがエスカレートしていくのは目に見えている。
そうなりたい気持ちと、まだ早い気持ちが心の中で攻めぎ合うけれど、結局越えられないのはわかっている。
そうなればまた高村くんを苦しめる。
臆病な夕貴が顔を出す。
帰らないと遅くなるよ、男の子と一夜を共にするなんて高校生のすることじゃない。
まるで母の言葉だ。
「…帰るね。」
言葉を勢いにして、高村くんの腕を離し立ち上がった。
見上げる彼の顔は優しいけど寂しげに眉が下がっていた。
「送っていくよ。」
「ううん、緑の服を脱いでいくからここでいいよ。」
そう、彼の側にいられるのは緑の私。緑のパーカーを脱げば彼の側にいられない。付き合っていることがバレたら迷惑がかかってしまう。
バレたら私の回りもきっと変わる。七海にも秘密にしていることが分かったとき、どうなるのかが怖い。
彼女は私のことを理解してくれた。彼女だけは変わらないって信じたいけれど、中学のときのトラウマがまだ私を放さない。
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