第1章

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高村くんには窓を見てもらって、クローゼットの前で着替えを済ませた。 束ねた髪をニット帽に押し込み、朝の格好になった。 「もーいいよ。」 こちらに向き直った高村くんの目が大きく見開かれた。 「可愛い。ボーイッシュな格好も似合うな? ベリーショートにしてみたら?似合うよ。」 「そう?短くしたこと無いから勇気がいるよ。」 「長いのもいいけどな。夕貴のポニーテール好きだよ。」 「ありがと!高村くんは誉め上手だね。」 ニッコリ笑ってどちらともなく玄関に向かう。 ドアの前、靴を履いて高村くんと向き合った。 「また来週な。」 「うん。」 マスクを付けようとすると、手を止められ彼の腕の中に閉じ込められた。 ゆっくり顔を上げると高村くんの顔が重なってくる。 腰を抱き抱えるように持ち上げられ重なる唇は柔らかくて温かかった。 優しく包むように重ねられるだけのキス。物足りなさはあるけど、深くなると離れられなくなりそうで… 高村くんもきっと同じ思いなんだと思う。 ゆっくり下ろされもう一度ぎゅーっと抱き締められ両肩を掴まれゆっくり体を離された。 「真っ暗になる前に駅に行って…心配だから…。」 「うん、来週また来るね。」 「ああ、また来週。気を付けてな。」
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